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3.4 疲労試験結果
疲労試験は、片振・三点曲げ負荷(荷重比R=0.1)の条件で実施した。腐食疲労試験は、腐食水槽中で、
試験環境:人工海水(アクアマリン)、40℃、
空気飽和状態
繰返し速度:0.17Hz
の条件で実施した。試験期間中は、pH、電気電導度および水位を測定・管理した。
図3−4に、公称応力範囲(ΔS)と破断寿命(Nf)との関係を示す。大気中に比べ40℃人工海水中の疲労強度は低下しており、寿命比で、
無塗装:50%(腐食係数Kc:1.3)
塗装:60%(腐食係数Kc:1.2)
程度である。
塗装による腐食疲労寿命改善効果が少ない原因として、き裂発生位置である角回し溶接部の高い応力集中(図3−2)と高い残留応力(図3−3)の影響を受けて早期にき裂が発生し、き裂発生に対する腐食環境の影響が小さかったためと考えられる。また、塗装試験片では、大気暴露による予備腐食時に腐食ピットが発生し、疲労き裂の発生を早めた可能性もあるが、試験後には破面が腐食しており確認はできなかった。
なお、塗膜厚さ(200μm,50μm)の影響に関しては、有意なデータが得られなかった。

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図3−4 中型試験片の応力範囲ΔσSと繰返し数Nfとの関係

 

3.5 小型および中間型試験片による試験結果の検証
2章では、腐食疲労強度に及ぼす各種要因の影響を小型試験片で明らかにしたが、小型試験片の結果を構造物の腐食疲労寿命評価に適用することの妥当性を検証するために、中型、中間型および小型試験結果の相関について検討した。
構造的応力集中の異なる試験片の統一的疲労強度評価法として、ホットスポット応力が提案されている。図3−5は、大気中で実施した、小型、中間型及び中型試験片の結果を、SR202B法に基づくホットスポット応力(ビード止端からの距離が板厚tの0.5tと1.5tの2点の応力を直線外挿し求めたビード止端相当点の応力)範囲(Δσhs)と破断寿命(Nf)との関係で整理したものである。3種の試験片の結果は、ほぼ同一範囲内にあり、ホットスポット応力で統一的に疲労強度が評価できる。
一方、図3−6は、海水中の試験結果のΔσhs

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図3−5 角回し溶接継手試験片(小型、中間型、中型)の疲労試験結果の比較(大気中)

 

 

 

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